佐賀大学経済学部 中西 一 の HP / 予算制度・財政再建・財政政策を専門とする |
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2019年度アベノミクス研究(政策研究・政策提言)
現在の政権の経済政策「アベノミクス」は政権成立の2012年12月より7年が経過した。その当初の骨子は「3本の矢」財政政策・金融政策・成長戦略であり、短期の景気対策で当面の経済情勢をつなぎ、規制緩和等の成長戦略により持続的な成長軌道に乗せるはずであった。
現実には、短期の景気対策の有効性の低さと高い代償、および経済成長戦略をめぐる誤った政権側(あるいは世論も含めて)の認識により大幅な軌道修正を余儀なくされた。人手不足問題を強く意識した少子化対策を中心としており、資本・労働・技術進歩が経済成長の要因であるという背景から、これらの要因に「供給側から」アプローチする政策体系となっている。アベノミクスver.2「1億総活躍政策」以降、福祉・教育政策こそが経済成長につながるという、かつてない政策認識となっている。これが日本経済の「現実」が強いた、保守政権の事実上の方向転換であった。女性や退職者を労働市場に引き込み、子供や家庭を作らない要因である非正規雇用の低い処遇や、正規雇用の人々も長時間労働で余裕がない中で、これらの人々の生活条件を改善することが少子化の改善、ひいては経済成長につながるという認識から働き方改革が進められる。消費税増税財源は高等教育と幼児教育の無償化に費やされる。そして何よりも短期的には、そして量的にはそうせざるを得ないところだが、入管法改正などで外国人労働者を受け入れて人手不足を克服せねばならない。現在の政権は、その後半においては日本経済が必要とする手立てを講じてきたとは言える。
これらの政策は、日本経済の状況から見れば遅きに失しているぐらいであるが、改善の余地も大きく、またこれらだけでは十分ではないだろう。国民全体がこの問題に対して知恵を絞る必要があるし、可能な限りは自分たちのできるところから日本経済の再生のためにできることをやっていくべきである。「アベノミクス」ならぬ「ワタシタチノミクス」を構想すべきであるという視点で、本ゼミでは学生主体の政策提言を行ってきた。安倍政権下では最後の「ワタシタチノミクス」となるかもしれないが、同様の課題は日本経済の問題が克服されない限り続くものと考えられる。今年度の学生提案、「ワタシタチノミクス」の成果をご覧いただきたい。
2018年度卒業中西ゼミ生リスト:(研究分野とチーム名、および氏名)
新規事業促進策:”はるひら・の”チーム:春野謙太 平野海里
移民政策:”公務員”チーム:塚原隆賀 津田龍之介
非正規雇用問題:"mmn"チーム:木村みどり 坂梨未来 中村ののか
結婚促進策:”イケアラ”チーム:蘭舜也 池田達也
アベノミクス研究イントロダクション
「ワタシタチノミクス」政策研究・政策提言
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